70年代洋楽ロックのライブ・アルバムの中からお気に入りの10枚を選んでみました。熱いライブの模様を収めた名盤は何枚もありますが、個人的な思い入れもあって皆さんの意見とはたぶん違うであろうアルバムをトップに選んでいます。
その他の9枚はベスト100で選んだアルバムとなるべくダブらないようにしましたが、10枚だけというのはなかなか難しいものですね。『フィルモア・イースト・ライヴ』や『ライヴ・アンド・デンジャラス』は迷ったあげく外しました。
ライブの名盤の中には日本公演の模様をレコーディングして世界的に有名になったものもあり、実際に体験された方にとっては何ものにも代えがたい貴重な時間が記録されたアルバムとして、宝物になっているのではないかと思います。
ON STAGE RAINBOW
Ritchie Blackmore - guitar
Ronnie James Dio - vocals
Tony Carey - keyboards
Jimmy Bain - bass
Cozy Powell - drums
Introduction: Over The Rainbow
1. Kill The King
2. Medley: Man On The Silver Mountain
3. Catch The Rainbow
4. Mistreated
5. Sixteenth Century Greensleeves
6. Still I'm Sad
学生時代に何度か大物ミュージシャンのライブへ足を運んだのですが、リッチー・ブラックモア率いるレインボーのライブを見たのは1978年のことです。
レインボーの初来日は76年。78年は日本で収録されたライブ・アルバム『オン・ステージ』リリース後の2度めの来日で、私が参戦したのは大阪厚生年金会館でのライブです。
この前年にはイアン・ギラン・バンドを同じく大阪で見たのですが、とにかく音がでかくて圧倒されました。たまたま席がスピーカーの近くだったこともあって、音が波のように顔に当たるのが分かって大興奮。
ただしアルバム『鋼鉄のロック魂 (Clear Air Turbulence)』が今ひとつピンとこなかったこともあり、肝心のライブの内容があまり印象に残っていません。驚いたのは会場を出たら耳が遠くなっていたことで、一緒に行った友人と顔を見合わせて笑ってしまいました。
本題のレインボーのライブは、オープニングで映画『オズの魔法使い』の主題歌「虹の彼方に(Over The Rainbow)」が流れ、劇中のジュディ・ガーランドのセリフが「We must be over the rainbow, rainbow, rainbow...」とリフレインしたところでリッチーのギターからOver The Rainbowのメロディーが響きます。
そこからなだれ込むように「キル・ザ・キング」のハードなイントロが始まると会場は一気に興奮の坩堝へ。”ウォ~ッ!!”というあの雰囲気こそがライブの醍醐味です。まさにオープニングを飾るに相応しい演出と選曲で申し分のないスタートでした。
ボーカルのロニーがサービスで最前列のファンと握手をしていたら、興奮して手を離さない奴がいて思い切り振りほどくというシーンもありましたが、オープニングについで盛り上がったのが終盤のドラムソロのコーナーです。
パワフルにドラムを叩くコージー・パウエルを載せたセットが徐々にせり上がり、かなり高い位置まで上がってまた元の位置へ。最後にコージーが両手に持ったスティックを2本とも頭上へ高々と放り投げ、見事にキャッチしてドラムソロを締めくくると会場は拍手喝采の嵐です。
リッチー・ブラックモアのテクニカルで鋭いギターと、ロニー・ジェイムズ・ディオのややハスキーでパワフルなボーカル。さらにドラムには”ロック界の渡り鳥”ことコージー・パウエルという3人の強力なメンバーを評して「三頭時代」という呼び方もありました。ハードロックが最後の輝きを放っていた時代に、レインボー全盛期のライブを見ることができたのは、今でも幸運だったと思います。
さて、このアルバムは実際のライブと同様「オーバー・ザ・レインボウ」から始まって「キル・ザ・キング」のイントロが会場に火をつけるという流れです。力強いドラムが速めのテンポで、他の曲に比べて短めのオープニング・ナンバーをリードしてキレの良いエンディングへ。
続いてアルバム『銀嶺の覇者』からヒットしたタイトル・ナンバー「マン・オン・ザ・シルバー・マウンテン」。ファンも納得の曲順ですが、興奮した観客の熱を鎮めるようなブルースを挟んでいるのがミソですね。
ロニーの情感のこもったボーカルとリッチーのギターソロが美しい「キャッチ・ザ・レインボー」は、ボーカルにデヴィッド・カヴァーデイルを据えた第3期ディープ・パープル時代のヒット作『紫の炎』に収録されていた「ミストゥリーテッド」と並んでこのアルバムの聞きどころです。
ディープ・パープルやレインボーにあまり興味のない人たちは多分このあたりの曲が好みではないのかなと思いますが、重厚なブリティッシュ・ハードロックらしい、静かに盛り上がるマイナーなメロディーの曲は彼らの持ち味だと思います。
ラストはハードなギターリフで始まる「スティル・アイム・サッド」。この曲に限らずシンプルでクリアなトーンとディストーションの効いたサウンドを自在に使い分けてステージを支配するリッチーのギターは見事です。
黒い衣裳が似合うリッチー・ブラックモアはストラトキャスターを抱えた魔王で、彼のギターが繰り出すフレーズは呪文というのは大袈裟でしょうか。強力なメンバーを配下の魔物と呼ぶのも失礼だけど、この頃のレインボーにはそんな雰囲気が似合うような気がします。
残念なのはジャケットのデザインで、これさえ良ければその後の評価ももう少し高くなったのではないでしょうか。
「Certified Live」DAVE MASON
ツボを押さえたギターと渋いボーカル、そして人懐っこそうなこの笑顔。バックの演奏とコーラスも熱くコンビネーションも抜群。一曲目の「フィーリン・オールライト」からラストの「ギミ・サム・ラヴィン」まで、デイヴ・メイスンの『ライヴ~情念』は何度聴いても気持ちのいいライブの名盤です。
自作の曲だけではなくボブ・ディランの名曲「オール・アロング・ザ・ウォッチタワー」などカバーも楽しそうに演奏しています。ラスト・ナンバーはスペンサー・デイヴィス・グループの曲ですね。
「LIVE RUST」NEIL YOUNG
我が道を行くニール・ヤング、70年代総決算のようなライブ。アコースティック・サイドとエレクトリック・サイドで、生ギターの音とクレイジーホースを従えたバンドサウンドの両方が楽しめます。
独特のか細い声で歌う、大ヒットした「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」やニコレット・ラーソンでもおなじみの「ロッタ・ラブ」、ハードかつ切ない「ライク・ア・ハリケーン」など、シンガー・ソングライターとしての彼の魅力が再確認できるアルバムです。
「Waiting For Columbus」LITTLE FEAT
名ギタリスト、ローウェル・ジョージ率いるリトル・フィートのライブ。『ディキシー・チキン』と同じくネオン・パーク作のジャケットはやや微妙ですが、中身は最高です。
アメリカのバンドらしいカラッと明るい爽快なノリでボーカルもギターも気持ちよく、中でも「オール・ザット・ユー・ドリーム」は一番のお気に入りです。サザンの桑田佳祐が「いとしのフィート」という曲を書いたように、ミュージシャンにも愛されるバンドでした。
「Live Album」GRAND FUNK
オープニングの「アー・ユー・レディー」からとにかくパワフル。ギター・ベース・ドラムスという最小編成のバンドが繰り広げる荒々しいライブ。粗削りなところにまた惹かれます。
「ハートブレイカー」や「インサイド・ルッキング・アウト(孤独の叫び)」など、マーク・ファーナーのボーカルはロック好きの心に刺さるところがありますね。雷雨の後楽園球場で行われた1971年の伝説のライブも「アー・ユー・レディー」でスタートしました。
「Beck Bogert & Appice Live」BBA
天才ジェフ・ベックが元カクタスの腕利きリズム隊ティム・ボガート、カーマイン・アピスと組んだ念願のロックトリオ、BBAのジャパンライブです。
スティービー・ワンダー作の「迷信」はオリジナルを遥かに凌ぐかっこよさで、ここから怒涛のライブが始まります。ブンブン唸るベースとヘヴィーなドラム、変幻自在のギターは日本のロックファンを魅了しました。緊張感のある「レディー」も、のけぞるくらいかっこいいです。
「Live At Leeds」THE WHO
イングランドの名門、リーズ大学での臨場感溢れるライブ。収録は学生食堂で行われたそうです。キース・ムーンはドラムを叩きまくり、ジョン・エントウィッスルのベースは縦横無尽に駆け巡り、ピート・タウンゼントのギターは激しく切れの良いリズムを刻みます。
荒々しいパワフルなパフォーマンスを収めたアルバムは、前年に発表されたロックオペラ『トミー』と同じく大ヒット。初期のモッズのイメージを覆し、ライブバンドとしての実力を見せつけました。
「Yessongs」YES
プログレというと何となく下を向いて黙々と演奏しているようなイメージがありますが、まぎれもなくロックのライブです。しかもテクニシャン揃いのイエスが繰り広げるパフォーマンスは観衆を圧倒しました。「燃える朝焼け」の緊張と緩和の繰り返しや「ラウンドアバウト」の格好良さ。
発売当時は3枚組のLPという大作。『こわれもの』『危機』という名盤を立て続けにリリースしたプログレッシブ・ロックの雄イエスの、絶頂期を記録したアルバムでもあります。
「KISS ALIVE!」KISS
邦題は『地獄の狂獣』。ビジュアルにこだわり、エンターテインメントに徹したライブバンド会心の一枚。このアルバムのヒットでキッスの名前が知れ渡りました。ローリング・ストーン誌の「音楽史上最高のライブ・アルバム50枚」の第6位。ロックンロール・ショウの熱気が伝わるライブです。
この翌年には『Destroyer(地獄の軍団)』を発表。彼らの代表曲となった「デトロイト・ロック・シティ」や「ベス」などがヒットして、その地位を不動のものにしました。
「Live In Japan」DEEP PURPLE
やっぱりこのアルバムは外せません。バンドの雰囲気は最悪でも、ステージに立てば黄金期の強力メンバーは実力を発揮して、ロック史上に残るライブアルバムとなりました。当初は日本のみで発売の予定が、あまりにも出来が良かったので海外でも『Made in Japan』として発売されました。
「ハイウェイ・スター」「スモーク・オン・ザ・ウォーター」などヒット曲をこれでもかと詰め込んだライブは、ラストの限界までヒートアップする「スペース・トラッキン」まで一気に突っ走ります。
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